【連載】クラシックに詳しっく! |第3番:クリスマスを迎える前に/第2楽章:『雪の日のキラキラサウンド』
ピアノ教本/クラシックピアノ

クリスマスが近づくと、劇場やホールでは子どもたちの笑い声が響き、街には心躍るメロディがあふれます。今週は、そんな冬の日を彩る「キラキラサウンド」の世界へご案内します。
『クラシックに詳しっく!』って?
普段の生活の中でクラシック音楽が流れているシーンは意外と多く、
ちょっと耳をすませば、驚くほど身近で親しみやすい音楽だったりします。
この連載では、そんな“日常でふと耳にするクラシック=暮らしック音楽”を、
季節やテーマに合わせて楽しくご紹介していきます。
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第2楽章:雪の日のキラキラサウンド
この時期、お子さん向けに上演されるのが、チャイコフスキー作曲のバレエ『くるみ割り人形』。
クリスマス・イブの日のお話しで、おじいちゃんからくるみ割り人形をプレゼントされた少女が、人形を助けネズミと戦い、呪いが解けた王子と結婚するという楽しいファンタジーが、華やかで心浮きたつような音楽で紡がれています。
全曲通しで100分程度の作品ですが、チャイコフスキー自身が20分程度にまとめた、美しいメロディてんこ盛りの組曲は演奏頻度も多く、耳にされたことがあるかと思います。
当時開発されたばかりの楽器、チェレスタをいち早く取り入れた「金平糖の踊り」
速いテンポで踊られるウクライナ地方の踊り「トレパーク」
ソフトバンクのCMでもお馴染みの「葦笛の踊り」
美しいハープの前奏から始まる「花のワルツ」
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ピアノ連弾 チャイコフスキー 組曲 くるみ割り人形 Op.71a
(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)
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ポケットスコア チャイコフスキー:組曲《くるみ割り人形》作品71a
(全音楽譜出版社)
チャイコフスキーには、ひと月ごとのロシアの情景を詠んだ詩に作曲した、全12曲のピアノ曲集『四季』もあり、中でも11月の『トロイカ』はよく弾かれる作品です。
「トロイカ」とは、ロシアの3頭立ての馬ソリのことで、郵便馬車などとしてロシアでは日常的に活躍していました。その情景が思い浮かぶような、リズミックな作品です。
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全音ピアノライブラリー チャイコフスキー 四季
(全音楽譜出版社)
ソリつながりで登場するのは、アメリカの作曲家、ルロイ・アンダーソンの『そり滑り』。
ルロイ・アンダーソンは20世紀に活躍した、アメリカ・ポップスクラシックの巨匠で、軽妙洒脱、遊び心に溢れた小品を数多く残しています。
運動会のBGMとして定番の「トランペット吹きの休日」
弦楽の速弾きが見事な「フィドル・ファドル」
イオングループのお掃除時間のBGMでも使われている「シンコペイテッド・クロック」
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ピアノで弾くクラシック・アーティスト ルロイ・アンダーソン/ジョージ・ガーシュウィン/ジョン・フィリップ・スーザ
(ケイ・エム・ピー)
モーツァルトも、アンダーソンと同名の『そりすべり』を書いています。
こちらは、『3つのドイツ舞曲K.605』の3曲目として収められており、鈴とポストホルンが賑やかに奏でられます。
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ヤマハピアノライブラリー ピアノ連弾曲集2 CD付
(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)
オリジナルはオーケストラ版ですが、こちらの楽譜はピアノ連弾版です。
北欧フィンランドの作曲家シベリウスの『もみの木』も、この時期にぴったりのピアノ小品です。
この曲は、松や白樺など、フィンランドを象徴する樹木をテーマに書いた作品をまとめた『5つの小品(樹の組曲)』作品75の5曲目にあたります。
木々を題材に、自然への畏敬とフィンランド人の心の情景を描いた曲集で、シベリウス48歳のころに書かれました。 風雪に耐え立つ樹の力強さや美しさを感じられる作品です。
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シベリウス・ピアノ名曲集
(ドレミ楽譜出版社)
『5つの小品』の他、作曲者自身のピアノソロ編曲版による『フィンランディア』や『悲しきワルツ』他が収録された、シベリウスを知るのにおススメの1冊

シベリウス ピアノアルバム
(全音楽譜出版社)
日本シベリウス協会の最高顧問を務めるピアニスト館野泉さんによる編集で、詳細な解説も読みごたえ充分です
ピアノで奏でるクリスマス曲、最後は「ピアノの魔術師」の異名を持つ、フランツ・リストの『クリスマス・ツリー』です。
リストの作品と言えば超絶技巧なイメージですが、これはリストが孫娘のために書いた弾きやすい作品集で、古い民謡や教会の聖歌などが引用されています。
3曲目の『飼い葉桶のそばの羊飼いたち』、4曲目の『誠実な人々よ、来たれ』では、どこかで聞いたことのあるクリスマス・キャロルが聞こえてきます。
3曲目『飼い葉桶のそばの羊飼いたち』
4曲目の『誠実な人々よ、来たれ 』(神の御子は今宵しも)
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リスト クリスマス・ツリー
(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)
さて、クリスマスを迎える12月の「クラシックに詳しっく」。
次回はこの時期に欠かせない、讃美歌の数々をご紹介したいと思います。どうぞお楽しみに!

●この記事を書いた人
もり
魚と麺類がおいしい福岡に生まれ、高校卒業後に渡欧。1年のドイツ語研修を経て、ウィーンにてピアノ、古楽奏法、音楽学、楽器法、指揮法などを学ぶ。帰国後、大学にて音楽学を専攻、同時に棒振り人生をスタート。指揮、トレーナー、講座、編曲等でクラシック系を中心に音楽と携わり、早〇十年。ニュースはスマホで読みますが、楽譜と書籍は紙印刷を今でもこよなく重宝しています。











