「音楽は、自由で楽しい」——絵本『ドンドンとみんなでドレミファソ』が生まれるまで
ピアノ教本/クラシックピアノ
楽器を習っていなくても、音楽は楽しめる。
そんな想いから生まれたのが、音楽×朗読×塗り絵という新しいかたちの絵本『ドンドンとみんなでドレミファソ』(サーベル社刊)。
企画のきっかけから制作の裏側、そしてこの絵本に込めたメッセージまで、作者の酒井遥さんと編集担当の比留間一昭さんにお話をお聞きしました!

絵本『ドンドンとみんなでドレミファソ』作者:酒井遥さん
「これは今までにないものになる」——企画が動き出した瞬間
―― この絵本はどのようにして生まれたのでしょうか?
酒井:偶然の出会いから生まれた作品ですよね。
比留間:友人のイベントに顔を出した時、たまたま偶然、レコーディングエンジニアの寺田さんと出会って少しお話をさせていただいたのですが、その時紹介されたのが酒井さんだったんです。
実は、最初から絵本を作ろうと思っていたわけではなかったんです。
最初の打ち合わせではまったく別のものを企画していたのですが、酒井さんに当社の出版物をお見せしながらいろいろなお話をしていく中で、今の「ドンドン」の原型になるアイデアが自然と出てきて、「これは今までにないものになるかもしれない」と、直感的に面白さを感じたのが始まりでした。
音楽への「入り口」として
―― 酒井さんは作曲をメインに活動されていますが、なぜ「絵本」という形を選ばれたのですか?
酒井:世の中にはすでにたくさんのすばらしい教本やワークブックがあるので、もし自分が作るなら、少し違う角度から音楽への入り口を広げるものがいいと考えました。
「教える」前提の教材だと、どうしても楽器を習っていたり、これから習う予定の子に限定されてしまいます。それ以外の子たちにも音楽の楽しさ、すばらしさを届けるには「絵本」という形がいいのではないかと思ったんです。
比留間:正直、最初は「楽譜」や「テキスト」を想像していたので、酒井さんからの企画書を見たときは驚きました(笑)。でも、発想がとても面白くて。「これは一度、実験的にやってみたい」と思いました。
―― 登場するキャラクターたちも、とてもかわいいですね。
比留間:キャラクター決めと背景にあるコンセプトづくりだけで、最初に2~3か月はかかっています。普段の楽譜の挿絵とは違い、イラストが要になるので、コンセプトのすり合わせは本当に丁寧に行いました。
酒井:原案やコンテは私ですが、熟練のデザイナーさんにご相談をさせていただきながら最終的なデザインを仕上げていきました。
▲酒井さんの原案。この段階ですでに完成形が見えるクオリティの高さに驚き…!
酒井:また、表紙は「色を自分で塗ってみたら?」と提案していただき、合作のようになっているので個人的にもお気に入りなんです。
「正解」や「間違い」に縛られず、自分らしく自由に楽しんでほしい
―― 次に内容についてお聞きします。主人公のドンドンとその仲間たちが音楽を楽しんでいると、その楽しさが森全体に広がっていくところがとてもステキですね。
酒井:ありがとうございます。この絵本で一番伝えたいのは「音楽は楽しいんだよ」ということです。楽器を習っていてもいなくても、音楽っていいものだ、楽しいものだ、ということが伝えられたらと思っています。
―― たくさんの動物と楽器が描かれていて、「ぬりえ」がかなり充実しています。イラスト部分に色を塗らず「ぬりえ」にされた理由は?
酒井:そうですね、イラストに色を塗らなかった理由は、「正解」や「間違い」に縛られてほしくないという思いがあったからです。自分らしく音楽やアートを感じてほしい。何色で塗ってもいいし、人と違ってもいい。家族やお友だち同士で「それ、面白いね」って言い合えることを大切にしたいと思いました。
―― すてきです!
酒井:また、完成した絵本は、その子だけの世界にひとつだけの特別な一冊になります。そして、その子が将来大人になってから「自分が子どもの頃に塗った絵本」を見返したり、わが子にも同じ絵本をプレゼントして親子でコミュニケーションしていただけたら素敵だな、と思っています。

絵本の世界を、実際のメロディとナレーションでも楽しめる
―― さらに、今回の絵本では実際の音楽や朗読をインターネット上のプラットフォームで楽しむことができます。歌だけではなくてBGMもあってすごく豪華ですが、作曲面で心がけられたことは?
酒井:この本が音楽に触れたり勉強するきっかけになれたら、という思いがあったので、歌にはド~シのすべての音が自然に出てくるように構成しました。最初は16小節を想定していましたが、子どもが覚えやすいように最終的に8小節にしています。
また、BGMにもこのメロディのモチーフを使っているので、そういうところも楽しんでもらえたらと思います。
―― 解説ページにも音とナレーションが付いていますね。
酒井:最初は解説ページに音をつける予定はなかったのですが、「最後までワクワクした気持ちで楽しんでほしい」と思って、後から追加しました。
“お勉強”にならないように、音と声で自然に楽器に親しめるようにしています。

家庭でも、教室でも。楽しいコミュニケーションツールとして
―― この本を、どんなふうに使ってほしいですか?
酒井:先ほどお話ししたように、ご家庭では親子のコミュニケーションツールとして使ってもらえたら嬉しいです。塗り絵としても音楽絵本としても楽しめますし、兄弟や友だち同士で見比べるのも楽しいと思います。
また、成長の記録としてもお使いいただけるよう、最初のページと最後のページに「始まりの日」と「完成した日」の日付と名前と年齢を書けるようにしています。
この本が小さいお子さまにとっては人生で初めてのアート作品になる可能性もあるので、世界にひとつの自分だけの作品として大事にしてもらえたら嬉しいですね。
強いタッチで塗ってもある程度耐えられ、かつ色が乗りやすい紙を選びましたので、長く楽しんでもらえたらと思っています。
―― 大人が童心に返って塗っても楽しそうです。
酒井:ありがとうございます。私の知り合いにもそういった方がいらっしゃいます。ページ数が多いので、かなり塗りごたえがあると思います(笑)。
―― 教育現場についてはいかがでしょうか?
酒井:そうですね、音楽教育に関しては本当に入り口の部分だと思いますので、音楽教室の待合室に置いていただいたり、レッスンの導入部分に使っていただけたら嬉しいですね。
―― 発表会の朗読劇などにしてもすてきですね。
酒井:はい、音楽教室以外にも、幼稚園や保育園のお遊戯会で、音楽劇として発展させることも想定しています。そのため、物語で登場する楽器は、保育園や幼稚園でよく使われている楽器を意識して選んでいます。
「音楽って楽しいな」と感じてもらえたら
―― 最後にメッセージをお願いします。
酒井:本当にたくさんの方たちに支えていただき仕上がった作品です。この本を通して、「音楽って楽しいな」と少しでも感じてもらえたら嬉しいです。「正解」や「間違い」はありません。音楽に合わせて体を揺らしたり、手をたたいたり、好きな色を塗ったり、自由に思いきり楽しんでください。
絵本『ドンドンとみんなでドレミファソ』は全国楽器店で好評発売中♪

絵本『ドンドンとみんなでドレミファソ』
作・音楽:酒井遥
朗読ナレーション:下野紘
解説ナレーション:松浦秀香
発行:㈱サーベル社
仕様:B5横/48頁
定価:1,760円(税込)
作者プロフィール

◆酒井 遥 (さかい はるか)
作曲家。東京音楽大学作曲指揮専攻作曲(映画・放送音楽コース)卒業。
“耳にも心にも残るメロディー”をモットーに、ゲーム・テレビ番組等の劇伴音楽、CM、VTuber への楽曲提供と、様々なジャンルの作品を手掛けている。
アプリゲーム「オルタナティブガールズ」「スタンドマイヒーローズ」、プラネタリウム番組「ヒーリングアース in Japan」、テレビ番組「花嵐の剣士~幕末を生きた女剣士・中澤琴~」「コズミックフロント」(NHKBS プレミアム)、MonsterZ MATE「MonsterZPARADE」「エンドレスライン」等
梅干しとお祭りが大好き、猫と暮らしています。
















