【連載】クラシックに詳しっく!|第4番:ゆく年くる年クラシック
ウクレレ/カリンバ その他楽器
ゆく年くる年クラシック

2025年もいよいよカウントダウンとなりました。
今年は、皆様にとって、どのような一年となったでしょうか?
今年の出来事を振り返りつつ、来たる新たな年を迎えるこの時期ならではのクラシックコンサートをご紹介したいと思います。
連載『クラシックに詳しっく!』って?
普段の生活の中でクラシック音楽が流れているシーンは意外と多く、
ちょっと耳をすませば、驚くほど身近で親しみやすい音楽だったりします。
この連載では、そんな“日常でふと耳にするクラシック=暮らしック音楽”を、
季節やテーマに合わせて詳しく、楽しくご紹介していきます。
前回はこちら ▼
ゆく年:大晦日のカウントダウン・コンサート

クリスマスが終わり、年越しに向けてまっしぐらのこの時期、世界中でいろいろなイベントが行われています。
もちろん、クラシック音楽界も大盛況!
大晦日の夜に開催されるジルベスター(Silvester=聖ジルベスターの日=大晦日)コンサート、ニューイヤーズ・イブ・コンサートが世界各地で行われています。
特に有名なのが、ライプツィヒ・ゲヴァントハウスやウィーン交響楽団の『第九』、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のジルベスターコンサート、ウィーンやミュンヘンの歌劇場でのJ.シュトラウス二世作曲の『こうもり』上演などです。
さらに、ドレスデン、パリ、プラハなどでも、新年を迎える前に、いつもとは違う、華やかなコンサートが開催されています。
そして日本国内で、30年続いているのが、東急ジルベスターコンサートです。
その模様はTVでも放映されているので、ご覧になったことがある方も多いかと思います。
このコンサートの見どころは、何と言っても「カウントダウン演奏」!
新年を迎えるタイミングぴったりに曲を終わらせる――と言葉にすれば簡単ですが、演奏するのは機械ではなく人間です。時には、思いがけない失敗が起こることもありますよ…!
■オーケストラ・スコア

ポケットスコア エルガー:行進曲《威風堂々》第1番・第4番
(全音楽譜出版社)
■ピアノ独奏用

全音ピアノピース506 エルガー/威風堂々 第1番
(全音楽譜出版社)
今年は注目の女性指揮者、沖澤のどかさんを指揮に迎えて、今年生誕150年のラヴェル作曲『ボレロ』でのカウントダウンです。
東急ジルベスターコンサートは、テレビ東京他で12月31日の23:30~放送予定です。
東急ジルベスターコンサート放送予定
ボレロは同じメロディが延々と繰り返される名曲!
変幻自在のオーケストレーションを、スコアを追いながらご堪能ください。
■オーケストラスコア

ポケットスコア ラヴェル:ボレロ
(全音楽譜出版社)
また、福岡ジルベスターコンサートも10年以上続いており、こちらでもでもカウントダウン演奏が行われています。
■オーケストラスコア

シベリウス 交響詩 フィンランディア/作品26
(全音楽譜出版社)
■混声合唱

混声合唱とピアノのための シベリウス フィンランディア
(音楽之友社)
その他、ベートーヴェン交響曲全曲演奏会や、オペラ歌手を交えてのガラ・コンサートなど、男性アイドルグループ以外にも、大晦日はさまざまなコンサートが催されています。
ちょっと足をのばして、非日常の空間へ出かけてみてはいかがでしょうか?
くる年:ニューイヤーコンサート

年が明けると、ニューイヤーコンサートが世界各地で開催され、新たな年の門出を祝います。
その演奏会で必ずと言っていいほど演奏されるのがワルツやポルカ。
『こうもり』の作曲家J.シュトラウス2世をはじめとするシュトラウス一家や、その同時代の作曲家によるワルツやポルカは、聴く人の気持ちをウキウキワクワクさせてくれます。
そんなワルツやポルカ演奏の本家本元と言えば、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団!
そう、世界で最も有名な新春コンサートと言えば、現在、全世界150か国以上に中継されている、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートです!
ニューイヤーコンサートの始まりは、オーストリアがナチス・ドイツに併合されていた1939年12月31日に開催された、シュトラウス一家の特別演奏会に遡ります。
その後、1941年の第2回からは1月1日の正午に毎年開催されるようになりました。
初代指揮者クレメンス・クラウスが1954年に亡くなると、ウィーン・フィルのコンサートマスターであったウィリー・ボスコフスキーが後を継ぎ、1955年から1979年までの間、ニューイヤーコンサートの指揮者を務めました。
彼はヨハン・シュトラウス2世に倣って、ヴァイオリンを弾きながら、時折弓を振る「弾き振り」というやり方で、ワルツやポルカなどを指揮しました。
彼の存在によって、今に続くニューイヤーコンサートの人気が作られたと言っても過言ではないように思えます。
ハンガリーの民族音楽「チャールダーシュ」をモチーフにした、J.シュトラウス2世作曲『騎士パズマンのチャールダーシュ』では、弾き振りをするボスコフスキーの貴重な姿を見ることができます。
ボスコフスキーが引退してからは、ウィーン国立歌劇場総監督にもなった、ロリン・マゼールが7年間指揮を務め、その後は様々な指揮者が招聘されるようになりました。
長年ニューイヤーコンサートを共にした、マゼールとウィーン・フィルの息の合った共演でポルカ『騎手』をどうぞ♪
現在までで唯一、ソリストが登場したニューイヤーコンサートが、1987年のヘルベルト・フォン・カラヤン指揮による公演です。
この年は、キャサリン・バトルが軽やかに『春の声』を歌いました。
日本人指揮者では、2002年に小澤征爾さんがニューイヤーコンサートに登壇をしています。
アンコールの『美しく青きドナウ』演奏前には、恒例となっている新年の挨拶が行われ、さまざまな言葉で「新年おめでとう」が披露されました。
コンサートの最後を飾る『ラデッキー行進曲』では、お客さんが拍手で参加するのも恒例で、指揮者のパフォーマンスも楽しみのひとつです。
■ウィンナワルツを美しい女声三部合唱で

女声三部合唱 ヨハン・シュトラウス/春の声
(ドレミ楽譜出版社)
■ J.シュトラウス2世の主要なワルツやポルカを、ピアノソロで

全音ピアノライブラリー ヨハン・シュトラウス ワルツ・ポルカ集
(全音楽譜出版社)
■シュトラウス一家の作品の連弾楽譜

全音ピアノライブラリー シュトラウス ピアノ連弾曲集1
(全音楽譜出版社)

全音ピアノライブラリー シュトラウス ピアノ連弾曲集2
(全音楽譜出版社)
来年2026年は、カナダ人のヤニック・ネゼ=セガンがニューイヤーコンサート初登場します。
毎年、いろんな趣向がこらされているだけに、来年のコンサートも楽しみですね。
ニューイヤーコンサートは、NHKにて1月1日19:00から、衛星放送が予定されています。
実はこんな裏話が…
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団でも毎年ジルベスターコンサートが開催されています。
そのプログラムは翌日のニューイヤーコンサートと全く同じ!
というのも、ニューイヤーコンサートのゲネプロ(最終練習)をジルベスターコンサートとして公開しているんです。
一日早くニューイヤーコンサートを楽しめるなんて、ちょっとお得な公演ですね♪
その他「NHKニューイヤーオペラコンサート」が、1月3日(土)19:00~放送予定となっており、こちらでは錚々たる日本人歌手の歌声が堪能できることと思います。
それでは皆様、良い“酔い”の宵をお過ごしいただき、素敵な2026年をお迎えください。


●この記事を書いた人
もり
魚と麺類がおいしい福岡に生まれ、高校卒業後に渡欧。1年のドイツ語研修を経て、ウィーンにてピアノ、古楽奏法、音楽学、楽器法、指揮法などを学ぶ。帰国後、大学にて音楽学を専攻、同時に棒振り人生をスタート。指揮、トレーナー、講座、編曲等でクラシック系を中心に音楽と携わり、早〇十年。ニュースはスマホで読みますが、楽譜と書籍は紙印刷を今でもこよなく重宝しています。











