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わたしたちはあらゆる種類の関心事を共有する親しい友人として、二人いっしょに、自分たちの人生の相似したところ(パラレル)と相反したところ(パラドックス)を探求していたのである――E・W・サイード
かたやエルサレム生まれカイロ育ち、ニューヨークに住むパレスチナ人エドワード・サイード。かたやユダヤ人としてブエノスアイレスに生まれ、イスラエル国籍、ロンドン、パリ、シカゴ、そしてベルリンを中心に活躍する指揮者・ピアニスト、ダニエル・バレンボイム。つねに境界をまたいで移動しつづけている二人が、音楽と文学と社会を語り尽くした6章だ。
パレスチナとイスラエルの若き音楽家をともに招き、ともに学んだワイマール・ワークショップの話から、グローバリズムと土地、アイデンティティの問題、オスロ合意、フルトヴェングラー、ベートーヴェン、ワーグナーなど、白熱のセッションが続く。
目 次
はじめに
序
1
自分にとっての本拠地《ホーム》とは/ワイマール・ワークショップで西と東が出会う/解釈者は「他者」の自我を追求する/アイデンティティの衝突はグローバリズムと分断への対抗/フルトヴェングラーとの出会い/リハーサルの目的
2
パフォーマンスの一回性/サウンドの一過性/楽譜やテクストは作品そのものではない/サウンドの現象学/誰のために演奏するのか/音楽は社会の発展を反映する/芸術と検閲、現状への挑戦という役割/調性の心理学/過去の作品を解釈すること/現代の作品を取り上げること/ディテールへのこだわり、作品への密着/一定の内容には一定の時間が必要/中東和平プロセスが破綻した理由
3
大学やオーケストラはどのように社会とかかわれるのか/教師の役割とは/指揮者の権力性、創造行為の権力性/他者の仕事に刺激や発見がある/模倣はどこまで有益か
4
ワーグナーがその後の音楽に与えた決定的な影響/アコースティクスについての深い理解、テンポの柔軟性、サウンドの色と重量/オープン・ピットとバイロイト/イデオロギーとしてのバイロイト/バイロイトの保守性は芸術家ワーグナーへの裏切り/ワーグナーの反ユダヤ主義/国民社会主義によるワーグナーの利用/『マイスタージンガー』とドイツ芸術の問題/ワーグナーの音楽はその政治利用と切り離せるか
5
いまオーセンティシティが意味するもの/テクストの解釈、音楽の解釈/歴史的なオーセンティシティは過去との関連で現在を正当化する/二十世紀における音楽と社会の隔絶/モダニズムと近づきにくさ
6
有機的な一つのまとまりとしてのベートーヴェン/社会領域から純粋に美的な領域へ--後期べートーヴェン/音楽家の倫理とプロフェッショナリズム、ベルリン国立歌劇場管弦楽団/冷戦後の世界には「他者」との健全なやりとりがない/音楽のメタ・ラショナルな性格/ソナタ形式の完成と一つの時代の終わり
あとがき
訳者あとがき
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