【連載】クラシックに詳しっく!|「馬」にちなんだ名曲たち(後編)
ピアノ教本/クラシックピアノ
1月の「クラシックに詳しっく」は、午年に因み、馬が登場する音楽をご紹介しています。前編と併せてお楽しみください。
連載『クラシックに詳しっく!』って?
普段の生活の中でクラシック音楽が流れているシーンは意外と多く、
ちょっと耳をすませば、驚くほど身近で親しみやすい音楽だったりします。
この連載では、そんな“日常でふと耳にするクラシック=暮らしック音楽”を、
季節やテーマに合わせて詳しく、楽しくご紹介していきます。
バックナンバーはこちらから♪
第1番 生活の中にある「暮らしック音楽」
第2番:おはようからおやすみまで - 生活を彩る暮らしック音楽
第3番:クリスマスを迎える前に/第1楽章『クリスマスを祝う宗教曲』
第3番 クリスマスを迎える前に/第2楽章『雪の日のキラキラサウンド』
第3番:クリスマスを迎える前に/第3楽章 すべてを超えた讃美歌
第3番 クリスマスを迎える前に/第4楽章『やっぱり第九!』
第4番:ゆく年くる年クラシック
第5番「馬」にちなんだ名曲たち(前編)
第3楽章:ピアノで疾走!

ピアノの練習曲でおなじみのブルグミュラー、ギロックにも馬をテーマにした作品があります。
(貴婦人の)乗馬/ブルグミュラー
ブルグミュラーは、ショパンやリストと同じ時代に活躍した作曲家・ピアニストです。ドイツ南部レーゲンスブルクの音楽一家に生まれ、人生の大半をパリで過ごし、活躍しました。
『25の練習曲』op.100の最後を飾る『(貴婦人の)乗馬』は、原題を『La Chevaleresque』といい、このフランス語を直訳すれば、「騎士道的な女性」といったニュアンスになります。優雅な雰囲気というより、凛々しさを感じさせるタイトルですね。
音楽の感じ方は千差万別、楽譜から得られるニュアンスも人によってさまざまです。想像力を創造力につなげて、ご自身の『La Chevaleresque』を奏でてください。
■曲の世界をやさしく学べる一冊

新 こどものブルクミュラー 25の練習曲 第2版
(全音楽譜出版社)
待望のフルカラー化!各曲のイメージがますます鮮やかに。
■25の練習曲が物語絵本に♪

音楽絵本「ブルグミュラー絵本 『25の練習曲』に基づく25の物語
(バカンス・ミュジカル)
多数のイラストや解説コメントで、曲のイメージがより豊かに膨らみます
■連弾もステキです♪

原曲がそのままひける ふたりのブルクミュラー 25の練習曲 連弾伴奏集
(音楽之友社)
こちらは連弾で楽しめるブルクミュラーです
一方のギロックは、20世紀のアメリカで活躍した音楽教育家で、そのメロディの美しさから「音楽教育界のシューベルト」と呼ばれている人物です。
馬に乗って/ギロック
『Horseback Ride(馬に乗って)』というタイトルのこの曲、テンポの微妙な違いで、馬がどんなふうに歩いているか、イメージが変わりますね。
そして、ギロックは、クラシック・スタイルだけでなく、ジャス等の要素も取り入れた練習曲を多く残しています。
ニューオリンズのたそがれ/ギロック
ムーディーな『ニューオリンズのたそがれ』。楽譜はこちら。

ギロック:ジャズスタイル・ピアノ曲集
(全音楽譜出版社)
「ニューオリンズのたそがれ」ほか、さまざまなジャズ・スタイルで書かれた作品が収録されています。
一方、こちらにはジョプリンの『エンターテイナー』ギロック編曲版や、連弾曲が収められています。

ギロック:ピアノピース・コレクション3
(全音楽譜出版社)
ジョプリン「エンターテイナー」のギロック編曲版などのほか、「Horseback Ride(馬に乗って)」も収録されています。
ブルグミュラーもギロックも、初心者でもチャレンジできる小曲をたくさん残しています。まだ未習の方は、午年の今年に挑戦してみてはいかがでしょうか?
ピアノ曲をもう1曲、今度は超絶技巧な作品です。
トーナメント・ギャロップ/ゴットシャルク
この作品を書いたルイス・モロー・ゴットシャルクは、1829年にアメリカ、ニューオーリンズで生まれ、幼少期から神童としてピアノの才能を発揮していました。
ブラームスと同時代の人物で、生前は南米を中心にピアニストとしての名声が高く、作品は20世紀に入ってからようやく脚光を浴びはじめました。
『トーナメント・ギャロップ』は、スペインツアー中に初演された勇壮なギャロップで、華麗なピアノ技巧と情熱的な旋律で観客を魅了する、アクロバティックな超絶技巧な作品です!
■楽譜はこちら

ゴットシャルク : ピアノ作品集
(ドーヴァー社)
因みに…
「ギャロップ」とは、18世紀末ごろから、パーティーの終わりに歌い踊る曲として書かれた、テンポの速い曲のことを表します。馬が走り回るような動きの踊りだったので、ドイツ語で馬の駆け足を意味する「ギャロップ」という名前が付けられました。
ウィーンを中心とした舞踏会で人気になり、自宅でも弾けるようにと、ギャロップだけを集めたピアノ譜も出版されました。
ある世代より上の方々には、「俺たちひょうきん族」のオープニング曲として耳タコのこの曲も、ギャロップ調の行進曲で書かれています。
ウィリアム・テル序曲/ロッシーニ
この序曲は4つの部分で構成されており、それぞれ『夜明け』(0:26~)、『嵐』(2:49~)、『牧歌』(5:34~)、『スイス軍の行進』(7:58~)と呼ばれています。
ギャロップのリズムは『スイス軍の行進』で用いられています。『トーナメント・ギャロップ』にも出てきたリズムが、馬の足音を感じさせますね。
■動画やCDのおともに

ポケットスコア ロッシーニ「ウィリアム・テル」序曲
(全音楽譜出版社)
■ピアノ連弾楽譜はこちら

開いて使えるピアノ連弾ピース No.32 「ウィリアム・テル」序曲
(ヤマハ)
『スイス軍の行進』の連弾楽譜です。譜めくりする必要がない、見開き設計になっています。
第4楽章:歌声とともに
「歌曲の王」と呼ばれるシューベルトにも、馬が登場する作品があります。それが、あの有名な『魔王』D328です!
魔王/シューベルト
「嵐の夜、息子を抱いて馬に乗っている父親。息子は魔王の姿や声に怯えるが、父親は魔王の姿や声に気付かず、宿屋へと急ぐ。しかし、宿屋についた時には、息子は息絶えていた…」というゲーテの詩に、シューベルトが作曲した歌曲です。
執拗に弾かれる三連符が疾走する馬を表しています。
■楽譜はこちら

声楽ライブラリー シューベルト歌曲集1(中声)
(全音楽譜出版社)
シューベルトの三大歌曲集以外の名歌曲も収録しました。
■合唱バージョンの楽譜はこちら(女声三部合唱)

女声三部合唱 シューベルト「魔王」
(ドレミ楽譜出版社)
馬の音楽、最後を締めるのは、勇ましい女性騎士のお出ましです。

黄金の指輪をめぐって繰り広げられる神々達の壮大なストーリー楽劇『ニーベルングの指輪』。
楽劇とは、音楽と劇の融合を目指したワーグナーが提唱したスタイルです。歌の終わりでも途切れず音楽が続くスタイルを取り入れたり、歌の伴奏だけではないオーケストラの独立性や充実を図ったりし、新たなオペラ像を構築しました。
それでは楽劇『ヴァルキューレ』より、第3幕冒頭『ヴァルキューレの騎行』をどうぞ!
ヴァルキューレの騎行/ワーグナー
(~6:00辺りまでが騎行の部分です)
この曲を創ったワーグナーは、作曲だけでなく、脚本・台本、演出、プロデュースまでこなす、マルチな音楽家でした。
ドイツの神話に基づいて創られた楽劇『ニーベルングの指輪』は、『ラインの黄金』、『ヴァルキューレ』、『ジークフリート』、『神々の黄昏』の4部作から成り、総演奏時間は15時間を超える超大作です。
『ロード・オブ・ザ・リング』的な、世界を支配する力を持つ指輪を巡るストーリーで、登場人物やアイテムを暗示する「ライトモチーフ」という手法を用いて作曲されています。映画音楽のような感覚で楽しめる部分も少なくありません。
こちらはオーケストラのみでの演奏です。歌がなくても迫力満点です。
ヴァルキューレの騎行(オーケストラのみ)
■鑑賞のおともはこちら

(358)ワーグナー ワルキューレの騎行
(日本楽譜出版社)
オーケストラのみのミニチュアスコアです。
■ピアノでワーグナーにトライ!

ピアノソロ ドラゴン ワーグナー 2
(共同音楽出版社)
■金管の分厚いサウンドは、この曲にピッタリ!

『楽劇「ワルキューレ」よりワルキューレの騎行(金8)』 金管8重奏
(スーパーキッズ)
エピローグ

馬は古来より人間との関わり合いが深い動物で、農耕、輸送、戦時等で人間の生活のとって欠かせない存在でした。
神話や伝説の世界でもペガサスやユニコーン等、馬から派生した生き物も多く見受けられます。
そのためか、馬にまつわる音楽が数多く残されており、聴く人の気持ちを元気に力づけてくれます。
何気なく聞こえてくる音楽に耳を傾け、興味をもっていただければ、新しい素敵な出会いが待っているかもしれません。そして少しだけ足を進めて、ネットで検索してみたり、楽譜を開いてみたりしてはいかがでしょうか?
楽譜は音楽にとってレシピのようなものです。
同じレシピでも料理を作る人によって味が異なるように、同じ楽譜でも、演奏者によって聴こえてくる音楽は異なります。
レシピを知れば料理に興味が持てるように、楽譜を見れば、その曲の隠し味が聞こえてくるかもしれません。楽器が得意でない方も、楽譜に馴染みがない方も、簡単な楽譜の読み方をマスターし、素敵な出会いや楽しい発見を楽しんで頂ければと思います。

●この記事を書いた人
もり
魚と麺類がおいしい福岡に生まれ、高校卒業後に渡欧。1年のドイツ語研修を経て、ウィーンにてピアノ、古楽奏法、音楽学、楽器法、指揮法などを学ぶ。帰国後、大学にて音楽学を専攻、同時に棒振り人生をスタート。指揮、トレーナー、講座、編曲等でクラシック系を中心に音楽と携わり、早〇十年。ニュースはスマホで読みますが、楽譜と書籍は紙印刷を今でもこよなく重宝しています。










