ピアノ教本/クラシックピアノ

【連載】クラシックに詳しっく!|「馬」にちなんだ名曲たち(後編)

ピアノ教本/クラシックピアノ



1月の「クラシックに詳しっく」は、午年に因み、馬が登場する音楽をご紹介しています。前編と併せてお楽しみください。

楽章:ピアノで疾走!

ピアノの練習曲でおなじみのブルグミュラー、ギロックにも馬をテーマにした作品があります。

(貴婦人の)乗馬/ブルグミュラー

ブルグミュラーは、ショパンやリストと同じ時代に活躍した作曲家・ピアニストです。ドイツ南部レーゲンスブルクの音楽一家に生まれ、人生の大半をパリで過ごし、活躍しました。

25の練習曲』op.100の最後を飾る『(貴婦人の)乗馬』は、原題をLa Chevaleresqueといい、このフランス語を直訳すれば、「騎士道的な女性」といったニュアンスになります。優雅な雰囲気というより、凛々しさを感じさせるタイトルですね。

音楽の感じ方は千差万別、楽譜から得られるニュアンスも人によってさまざまです。想像力を創造力につなげて、ご自身の『La Chevaleresque』を奏でてください。

■曲の世界をやさしく学べる一冊

新 こどものブルクミュラー 25の練習曲 第2版
(全音楽譜出版社)

待望のフルカラー化!各曲のイメージがますます鮮やかに。

■25の練習曲が物語絵本に♪

音楽絵本「ブルグミュラー絵本 『25の練習曲』に基づく25の物語
(バカンス・ミュジカル)

多数のイラストや解説コメントで、曲のイメージがより豊かに膨らみます

■連弾もステキです♪

原曲がそのままひける ふたりのブルクミュラー 25の練習曲 連弾伴奏集
(音楽之友社)

こちらは連弾で楽しめるブルクミュラーです


一方のギロックは、20世紀のアメリカで活躍した音楽教育家で、そのメロディの美しさから「音楽教育界のシューベルト」と呼ばれている人物です。

馬に乗って/ギロック

Horseback Ride(馬に乗って)』というタイトルのこの曲、テンポの微妙な違いで、馬がどんなふうに歩いているか、イメージが変わりますね。



そして、ギロックは、クラシック・スタイルだけでなく、ジャス等の要素も取り入れた練習曲を多く残しています。

ニューオリンズのたそがれ/ギロック

ムーディーな『ニューオリンズのたそがれ』。楽譜はこちら。

ギロック:ジャズスタイル・ピアノ曲集
(全音楽譜出版社)

「ニューオリンズのたそがれ」ほか、さまざまなジャズ・スタイルで書かれた作品が収録されています。

一方、こちらにはジョプリンの『エンターテイナー』ギロック編曲版や、連弾曲が収められています。

ギロック:ピアノピース・コレクション3
(全音楽譜出版社)

ジョプリン「エンターテイナー」のギロック編曲版などのほか、「Horseback Ride(馬に乗って)」も収録されています。

ブルグミュラーもギロックも、初心者でもチャレンジできる小曲をたくさん残しています。まだ未習の方は、午年の今年に挑戦してみてはいかがでしょうか?


ピアノ曲をもう1曲、今度は超絶技巧な作品です。

トーナメント・ギャロップ/ゴットシャルク

この作品を書いたルイス・モロー・ゴットシャルクは、1829年にアメリカ、ニューオーリンズで生まれ、幼少期から神童としてピアノの才能を発揮していました。

ブラームスと同時代の人物で、生前は南米を中心にピアニストとしての名声が高く、作品は20世紀に入ってからようやく脚光を浴びはじめました。

トーナメント・ギャロップ』は、スペインツアー中に初演された勇壮なギャロップで、華麗なピアノ技巧と情熱的な旋律で観客を魅了する、アクロバティックな超絶技巧な作品です!

■楽譜はこちら

ゴットシャルク : ピアノ作品集
(ドーヴァー社)

因みに…

ギャロップ」とは、18世紀末ごろから、パーティーの終わりに歌い踊る曲として書かれた、テンポの速い曲のことを表します。馬が走り回るような動きの踊りだったので、ドイツ語で馬の駆け足を意味する「ギャロップ」という名前が付けられました。

ウィーンを中心とした舞踏会で人気になり、自宅でも弾けるようにと、ギャロップだけを集めたピアノ譜も出版されました。

ある世代より上の方々には、「俺たちひょうきん族」のオープニング曲として耳タコのこの曲も、ギャロップ調の行進曲で書かれています。

ウィリアム・テル序曲/ロッシーニ

この序曲は4つの部分で構成されており、それぞれ『夜明け』(0:26~)、『嵐』(2:49~)、『牧歌』(5:34~)、『スイス軍の行進』(7:58~)と呼ばれています。

ギャロップのリズムは『スイス軍の行進』で用いられています。『トーナメント・ギャロップ』にも出てきたリズムが、馬の足音を感じさせますね。

■動画やCDのおともに

ポケットスコア  ロッシーニ「ウィリアム・テル」序曲
(全音楽譜出版社)

■ピアノ連弾楽譜はこちら

開いて使えるピアノ連弾ピース No.32 「ウィリアム・テル」序曲
(ヤマハ)

『スイス軍の行進』の連弾楽譜です。譜めくりする必要がない、見開き設計になっています。

第4楽章:歌声とともに

「歌曲の王」と呼ばれるシューベルトにも、馬が登場する作品があります。それが、あの有名な『魔王』D328です!

魔王/シューベルト

「嵐の夜、息子を抱いて馬に乗っている父親。息子は魔王の姿や声に怯えるが、父親は魔王の姿や声に気付かず、宿屋へと急ぐ。しかし、宿屋についた時には、息子は息絶えていた…」というゲーテの詩に、シューベルトが作曲した歌曲です。

執拗に弾かれる三連符が疾走する馬を表しています。

■楽譜はこちら

声楽ライブラリー シューベルト歌曲集1(中声)
(全音楽譜出版社)

シューベルトの三大歌曲集以外の名歌曲も収録しました。

■合唱バージョンの楽譜はこちら(女声三部合唱)

女声三部合唱 シューベルト「魔王
(ドレミ楽譜出版社)


馬の音楽、最後を締めるのは、勇ましい女性騎士のお出ましです。

黄金の指輪をめぐって繰り広げられる神々達の壮大なストーリー楽劇『ニーベルングの指輪』。

楽劇とは、音楽と劇の融合を目指したワーグナーが提唱したスタイルです。歌の終わりでも途切れず音楽が続くスタイルを取り入れたり、歌の伴奏だけではないオーケストラの独立性や充実を図ったりし、新たなオペラ像を構築しました。

それでは楽劇『ヴァルキューレ』より、第3幕冒頭『ヴァルキューレの騎行』をどうぞ!

ヴァルキューレの騎行/ワーグナー

 (~6:00辺りまでが騎行の部分です)

この曲を創ったワーグナーは、作曲だけでなく、脚本・台本、演出、プロデュースまでこなす、マルチな音楽家でした。

ドイツの神話に基づいて創られた楽劇『ニーベルングの指輪』は、ラインの黄金』、『ヴァルキューレ』、『ジークフリート』、『神々の黄昏の4部作から成り、総演奏時間は15時間を超える超大作です。

『ロード・オブ・ザ・リング』的な、世界を支配する力を持つ指輪を巡るストーリーで、登場人物やアイテムを暗示する「ライトモチーフ」という手法を用いて作曲されています。映画音楽のような感覚で楽しめる部分も少なくありません。


こちらはオーケストラのみでの演奏です。歌がなくても迫力満点です。

ヴァルキューレの騎行(オーケストラのみ)

■鑑賞のおともはこちら

(358)ワーグナー ワルキューレの騎行
(日本楽譜出版社)

オーケストラのみのミニチュアスコアです。

■ピアノでワーグナーにトライ!

ピアノソロ ドラゴン ワーグナー 2
(共同音楽出版社)

■金管の分厚いサウンドは、この曲にピッタリ!

『楽劇「ワルキューレ」よりワルキューレの騎行(金8)』 金管8重奏
(スーパーキッズ)

エピローグ

馬は古来より人間との関わり合いが深い動物で、農耕、輸送、戦時等で人間の生活のとって欠かせない存在でした。

神話や伝説の世界でもペガサスやユニコーン等、馬から派生した生き物も多く見受けられます。

そのためか、馬にまつわる音楽が数多く残されており、聴く人の気持ちを元気に力づけてくれます。

何気なく聞こえてくる音楽に耳を傾け、興味をもっていただければ、新しい素敵な出会いが待っているかもしれません。そして少しだけ足を進めて、ネットで検索してみたり、楽譜を開いてみたりしてはいかがでしょうか?

楽譜は音楽にとってレシピのようなものです。
同じレシピでも料理を作る人によって味が異なるように、同じ楽譜でも、演奏者によって聴こえてくる音楽は異なります。

レシピを知れば料理に興味が持てるように、楽譜を見れば、その曲の隠し味が聞こえてくるかもしれません。楽器が得意でない方も、楽譜に馴染みがない方も、簡単な楽譜の読み方をマスターし、素敵な出会いや楽しい発見を楽しんで頂ければと思います。

この記事を書いた人

もり
魚と麺類がおいしい福岡に生まれ、高校卒業後に渡欧。1年のドイツ語研修を経て、ウィーンにてピアノ、古楽奏法、音楽学、楽器法、指揮法などを学ぶ。帰国後、大学にて音楽学を専攻、同時に棒振り人生をスタート。指揮、トレーナー、講座、編曲等でクラシック系を中心に音楽と携わり、早〇十年。ニュースはスマホで読みますが、楽譜と書籍は紙印刷を今でもこよなく重宝しています。

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