ウクレレ/カリンバ その他楽器

【連載】クラシックに詳しっく|式典を彩る音楽~卒業式編〈前編〉

ウクレレ/カリンバ その他楽器

寒さが一段落し、春の訪れを感じる季節となりました。

この時期は別れと出会いの季節…今まで過ごした場所を巣立ち、新しい環境での生活の準備をされている方も多くいらっしゃることと思います。

3月の「クラシックに詳しっく」はそんな時期を迎え、卒業式のシーンで聞かれるクラシック音楽をご紹介したいと思います。

近年では、J-POPの曲も多く取り入れられるようになりましたが、“あの頃”を思い出して頂ければ幸いです。

第1楽章:壮麗な開式

まずは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサート世界放送時に、ユーロビジョン(ORF、オーストリア放送協会もその中の一団体です)のロゴのバックで流れている音楽をご紹介しましょう。

その作品とは、フランス・ヴェルサイユ楽派最高の宗教音楽作曲家シャルパンティエ(Marc-Antoine Charpentier, 1643 – 1704)の代表作の『テ・デウム H.146』より『前奏曲』です。

華麗なファンファーレが卒業式の開式を告げます。

冒頭の打楽器ソロは同時代のフィリドール・ル・カデ作曲の『ティンバレスの行進』です
シャルパンティエの『前奏曲』は0:58~です

太陽王ルイ14世の栄光と絶大な権力を表す豪華絢爛な宮廷文化を彷彿とさせる音楽です。特に壮麗な『前奏曲』は有名で、様々な編成に編曲され、演奏されています。
テ・デウム』とは、キリスト教カトリック教会の聖歌の1つで、「私たちの神であるあなたを讃えます」と、神に感謝の心を捧げる歌詞が歌われます。

シャルパンティエの他には、ベルリオーズやブルックナーの『テ・デウム』などが有名です。

■楽譜はこちら

金管八重奏による『テ・デウム』
(ブレーン株式会社)

第1曲目「前奏曲(ロンド)」から「天主にまします御身をわれらにたたえ」「永遠の御父よ」「天も地も御身の栄えと」の部分までを金管8重奏に編曲しています

続いてはヘンデル作曲の『水上の音楽』より『アラ・ホーンパイプ』をどうぞ。

『水上の音楽』とは、イギリス王ジョージ1世の船遊びのBGMとしてヘンデルが書いた音楽を集めた約20曲の組曲で、研究編纂者の違いによって、いくつかの版が出版されています。

■楽譜はこちら

こちらは第1組曲

ミニチュアスコア No.148 HANDEL(ヘンデル)/水上の音楽「ハーティ版」

現代オーケストラ用に編曲されたゴージャスな響きのハーティ版のスコア

FLX168 フレックス・バンド(五声部+打楽器) アラ・ホーンパイプ(組曲『水上の音楽』より)

フレックスバンド用アレンジ版です。

RP-43 
水上の音楽Ⅰ/ヘンデル

リコーダーアンサンブル譜も出ています

今回ご紹介する『アラ・ホーンパイプ(ホーンパイプ風に)』は、この組曲の中で最も有名なナンバーで、近畿圏の方には近鉄特急電車の発車ベルとしておなじみの曲です。

「ホーンパイプ」とは、当時英国で流行したフォークダンスの一種です。

イギリスの夏の音楽祭「プロムス」で毎年演奏され、観客も一緒に踊っているイギリス民謡『水夫のホーンパイプ』の映像を、ご覧になったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか

次も同じく、ヘンデル作曲の『王宮の花火の音楽』をどうぞ!

序曲 0:04~ ブレー 7:38~ 平和 9:30~  歓喜 11:07~ メヌエット 13:07~ 

この組曲は、オーストリア継承戦争の勝利祝賀会としてイギリス王室が催した、ロンドンでの花火大会のBGMとして作曲されました。

ヘンデルは、それ以前にイギリス皇太子の結婚を祝うために『アタランタ』という歌劇を書いており、そのフィナーレは合唱と花火による祝祭の音楽で幕を閉じられます。この音楽がその後の花火大会でのBGMとして重宝されていたため、「花火大会だったらヘンデルの音楽でしょ!?」という鉄板状態でした。

満を持して披露された新曲は花火の音に負けない、華々しい音楽で、特に『歓喜』の部分は単独でも取り上げられる人気曲です。

■楽譜はこちら

ヘンデル 王宮の花火の音楽 スコア (日本楽譜出版社)

 1.「序曲」2:「ブレー」3:「平和」4:「歓喜」5:「メヌエット 1」6:「メヌエット 2」全曲のスコアです

ドレミ・クラヴィア・アルバム ヘンデル・ピアノ名曲集

「王宮の花火」をピアノで楽しみたい方へ。「水上の音楽」も入っています!

水上の音楽』、『王宮の花火の音楽』のどちらも、王侯貴族が聞くことを前提に作られているので、華やかながら節度ある音楽となっており、開式にふさわしい響きです。

第2楽章:行進曲で堂々と

運動会のような元気で賑やかな行進曲より、荘厳かつ堂々とした音楽が、このような式典ではよく用いられています。
まずはド定番の『威風堂々』第1番をご紹介します。

イギリスの作曲家エルガーの『威風堂々』は全6曲(6曲目は遺作として補筆出版)の行進曲集で、その中でもこの第1番は、圧倒的な知名度と人気がある作品です。

こちらの映像は、イギリス夏の音楽祭、「プロムス」のフィナーレを飾る、恒例の観客合唱付きです

中間部のメロディ(2:04~)は後にエドワード7世の戴冠式のために書かれた『戴冠式頌歌』の終曲『希望と栄光の国』に転用されており、この歌は第二のイギリス国歌と言われています。

『戴冠式頌歌』の終曲『希望と栄光の国』

■楽譜はこちら

行進曲『威風堂々』第1番・第4番 こちらはフルスコアになります。

ポケットスコア エルガー:行進曲《威風堂々》第1番・第4番

ピアノピース506 エルガー/威風堂々 第1番

ピアノソロで弾くならこちら!

ピアノ連弾 レッスン・発表会で使える 先生と生徒の連弾4

ピアノ連弾ならこちら。『威風堂々』、『愛の挨拶』はじめ、『ハンガリー舞曲』、『ドレミの歌』他が弾きやすいアレンジで収録されています。


次にご紹介するのもエルガーと同じイギリスの作曲家ウォルトンの作品です。

戴冠式行進曲『王冠』 

フェネル指揮東京佼成ウインドオーケストラの演奏でどうぞ

ウォルトンはエルガーの一世代後のイギリスで活躍した人物で、2曲の交響曲(第3番は未完成)、協奏曲、バレエ音楽や映画音楽等、幅広い作品を残しています。

行進曲『王冠』は1937年5月12日に予定されていたエドワード8世の戴冠式のために作曲されたもので、『威風堂々』と並び、特にイギリスで愛奏されている作品です。

■楽譜はこちら

クラウン・インペリアル戴冠式行進曲「王冠」 Crown Imperial /William Walton

その後、1953年6月2日のエリザベス2世の戴冠式のために行進曲『宝玉と勺杖』も作曲されました。

厳かな『王冠』に比べると『宝玉と勺杖』のほうが賑やかな作品となっており、この2曲は吹奏楽でもよく取り上げられるプログラムとなっています。

王室行事のために作曲された作品ということもあり、行進曲ですが、華々しくも格調高い響きが印象的です

続いては、時代をぐっとさかのぼり、17世紀のバロック期イギリスの作曲家、ジェレマイア・クラーク作曲の『デンマーク王子の行進曲』です

この作品は別名『トランペット・ヴォランタリー』とも言われていますが、それは、この作品が同じイギリスの作曲家パーセルによる『トランペット・ヴォランタリー』である、と誤って周知されていたことによります。

この曲はイギリス国王戴冠式などの国家の行事で演奏されていましたが、1939年になって『クラーク氏作デンマーク王子の行進曲』というタイトルがついた1700年出版の楽譜が発見され、クラークの作品であることが明らかになりました。トランペットで演奏されることが多い作品ですが、クラーク自身がチェンバロ奏者だったこともあり、この作品はチェンバロのために書かれたものです。

また、同じようなタイトルの『トランペット・チューン』もパーセルの作品だとされていましたが、こちらもクラーク作曲ということが明らかになっています。

IEBR407 輸入 デンマーク王子の行進曲〈カナディアン・ブラス〉(ジェレマイア・クラーク)(金管五重奏)【ThePrinceofDenmark’sMarch】

因みに、パーセルとはバロック時代のイギリス音楽史に欠かせない大作曲家で、40年に満たない生涯ながら、歌劇、教会音楽、器楽アンサンブルやソロ作品等、幅広く作品を遺しています。


次回は、授与式などで用いられる、穏やかな作品を中心にご紹介したいと思います。

この記事を書いた人

もり
魚と麺類がおいしい福岡に生まれ、高校卒業後に渡欧。1年のドイツ語研修を経て、ウィーンにてピアノ、古楽奏法、音楽学、楽器法、指揮法などを学ぶ。帰国後、大学にて音楽学を専攻、同時に棒振り人生をスタート。指揮、トレーナー、講座、編曲等でクラシック系を中心に音楽と携わり、早〇十年。ニュースはスマホで読みますが、楽譜と書籍は紙印刷を今でもこよなく重宝しています。

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