当代最高のチェリストが〈聖典〉の謎に挑む。バッハが「無伴奏チェロ組曲」に織りこんだ〈物語〉とは?
書籍/雑誌
バッハ 無伴奏チェロ組曲
秘められた〈物語〉を読む
スティーブン・イッサーリス 著/松田 健 訳
アルテスパブリッシング 2,750円
ISBN:9784865593235
“音楽の父” こと、J.S.バッハの代表曲のひとつ、「無伴奏チェロ組曲(BWV1007~1012)」。曲名だとピンとこない方も、曲を聴けば、ああ、あの曲ね! となる方が多いのではないでしょうか。
さて、この「無伴奏チェロ組曲」、何やらさまざまな謎があるそうなんですが、このたび、その謎を解き明かす本が登場です!
著者は、当代最高のチェリスト(チェロ奏者)との呼び声も高い、スティーブン・イッサーリス氏。至高のチェリストが至高のチェロ作品の謎を解き明かしていく・・・めっちゃワクワクしませんか? そこで今回は、本書の翻訳を手がけられた松田健さんに、本書の内容・読みどころについてお聞きしました!
―― そもそも、「バッハ 無伴奏チェロ組曲」とはどのような曲ですか?
「バッハ 無伴奏チェロ組曲」は独奏チェロのための曲集で、チェロの最重要レパートリーのひとつです。正確には6曲からなる組曲が6つ含まれた、組曲集です。バッハ自身の手稿が現存しておらず、さまざまな謎につつまれています。バッハ没後は長い間、チェロの教則本程度にしか認識されず、あまり日の目を見なかったのですが、20世紀に巨匠カザルスが世界に紹介し、広く知られるようになりました。
著者のイッサーリス氏本人による演奏動画がこちら:
2020年・ロンドンの音楽カフェ「Fidelio Cafe」での演奏
―― 著者のイッサーリス氏はどんな人で、今回の本はどんな内容ですか?
著者のスティーヴン・イッサーリスはイギリスが誇る世界屈指のチェロ奏者です。演奏面や音量面で有利なスティール弦を使わず、あえてガット弦を使うことで独特の音色を生み出します。
また、文筆家としても成功しており、児童書などで高い評価を受けています。本書では、この組曲集の成立背景についての説明があり、またバッハがそれを作曲した意図について、著者の直観にもとづく大胆な仮説が述べられています。
―― 本書の推しポイント(読みどころ)は? 秘められた物語って何ですか?
バッハの解説本というと難解そうなイメージがありますが、実はとても親しみやすいのが本書いちばんの推しポです。一貫して読者に歩み寄る姿勢で書かれているのです。 …「秘められた物語」とは何かですって? それは秘密です(笑)。でもこれは著者が長年この組曲集を演奏しながらはぐくんできた仮説であり、確たるエビデンスがないにもかかわらず、ふしぎと説得力があるのです。
本書のはじめの部分が試し読みできます!
親しみやすい語り口にぜひ触れてみてくださいね♪
―― どんな人に向けて読んでもらいたいですか? また、これからこの本を手に取る方へメッセージをお願いします。
バッハ、チェロ、そして音楽の愛好家の方ならどなたにも楽しんでいただけます。チェロとの関わりでいうと、チェロの音が好きな方、チェロを趣味で習い始めた方、エキスパートの方、そしてプロのチェロ奏者の方、すべてに楽しんでいただけます。
本書には楽譜も出てきますが、楽譜が読めなくてもまったく問題ありません。著者自身による演奏のプレイリストもはいっており、本文を読みながら演奏を参照することができます。壮大なストーリーを、ぜひ文字と音による立体的な経験でお楽しみください。
著者自身による演奏プレイリストページは下記画像をタップ
(版元のアルテスパブリッシングさんのサイトに遷移します)
[著者]スティーブン・イッサーリス(Steven Isserlis CBE)
世界屈指のチェロ奏者で、独特な感性と知性と音色が多くの聴衆をとりこにしている。バロックから現代音楽まで幅広い音楽に精通し、ベルリン・フィルやボストン交響楽団など世界最高峰のオーケストラと共演。その膨大なディスコグラフィには数々の受賞作が含まれる。新曲の世界初演も数多く手がけてきた。熱心な教育家としても有名で、各地でマスタークラスを開催し、好評を博している。文筆家としての活動では、本書以外にも子ども向けの音楽書を執筆しており、こちらでの評価も高い。1998年には音楽への貢献に対し、エリザベス女王から大英帝国勲章(CBE)を授与された。楽器はモンタニャーナ(1740年製)やグァダニーニ(1745年製)も所有しているが、近年はロイヤル・アカデミー・オヴ・ミュージックから貸与されたストラディヴァリのチェロ「マルキ・ド・コルベロン」(1726年製)をおもに使用している。
[訳者]松田 健(まつだ・たけし)
関西外国語大学教授(社会学、音楽社会学、英語)、同大学外国語学部英語・デジタルコミュニケーション学科長。
著書に『テキスト現代社会学』(ミネルヴァ書房)、訳書にウィリアム・ウェーバー『音楽テイストの大転換』(法政大学出版局)、ヴァレリー・ウォルデン『チェロの100年史』(道和書院)など。モダン・チェロを山口香子、竹内良治、Marion Davies、Leopold Teraspulsky、Eric Bartlettに、バロック・チェロを懸田貴嗣に師事。1980年代には関西楽壇でフリーランス奏者として広範に活動、1990年代前半には米国マサチューセッツ大学アマースト校のPerforming Arts Divisionでチェロ講師をつとめた。日本社会学会、日本音楽学会、日本ポピュラー音楽学会、およびAmerican Sociological Associationに所属。
◉スティーヴン・イッサーリス来日ツアー2025
10月16日(木)|CELLO LEGENDS & RISING STARS(東京・浜離宮朝日ホール)終了
10月17日(金)|チェリストたちの夜会(兵庫県立芸術文化センター)終了
10月18日(土)|チェロ・アンサンブル(北九州国際音楽祭内)終了
10月20日(月)|日本チェロ協会主催マスタークラス(東京・音楽の友ホール)
10月24日(金)|広島交響楽団 第455回定期演奏会(広島文化学園HBGホール)
10月29日(水)・30日(木)|大阪フィルハーモニー交響楽団 第592回定期演奏会(フェスティバルホール)