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【連載】クラシックに詳しっく!|第8番 春の訪れ〈前編〉

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三寒四温がようやく落ち着き、春らしい陽気の日々となりました。
新たな芽吹きの季節を迎え、この4月から新たな生活を始められた方も多いかと思います。そんな4月の「クラシックに詳しっく」は、春の訪れを描いた作品をご紹介したいと思います。

第1楽章:小さいけれど、素敵な佳作集

まずは、寛いで楽しんでいただける小品佳作をご紹介しましょう。

『春の歌』(『無言歌』第5巻op62より/メンデルスゾーン

『無言歌』とは、その名の通り、「歌詞を持たない歌」の意味で、メンデルスゾーンが最初に用いたタイトルです。技巧的な難易度は高くなく、オシャレなメロディと優美な響きで、出版当時から愛奏されてきました。その後チャイコフスキーやフォーレも同じタイトルで作品を残しています。

メンデルスゾーンは、『無言歌』を全48曲(6曲ずつ全8巻に分けて出版)書いていますが、その中でも最も有名なのが、第5巻に収められた、この『春の歌』でしょう。

楽譜の冒頭に「春の歌のように」と記されており、早春の優しい空気を感じさせてくれます。

弦楽アンサンブルでの演奏もお楽しみください。

■楽譜はこちら


ウィーン原典版 75 メンデルスゾーン 無言歌集(音楽之友社)

無言歌全8巻48曲に加え、遺稿や作品番号のないものも収められており、資料としても充実の内容です


全音ピアノピース012 メンデルスゾーン 『無言歌』より『春の歌』(全音楽譜出版社

こちらは『春の歌』のみのピアノピースとなります


『花の歌』~ランゲ作曲

ランゲはブラームスと同時代のドイツで活躍したピアニスト、作曲家です。『花の歌』で知られていますが、他にも『エーデルワイス』『荒野のバラ』『アルプスの山小屋にて』等、発表会のプログラムを飾る可愛いピアノ小品を約400曲残しています。

フルートと弦楽器による演奏で、より一層“春感”が増します

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ピアノピースギャラリー1 エリーゼのために(ドレミ楽譜出版社)

『花の歌』、『乙女の祈り』、『クシコスポスト』、『アルプスの夕映え』他、どこかで聴いた事のある小品が集められています。


全音ピアノライブラリー ランゲ ピアノアルバム(全音楽譜出版社)

音楽会や発表会に最適な、ランゲのオシャレな小品集です


『春に寄せて』(『抒情小品集』第3集op43より)~グリーグ作曲

右手の和音の響きの中、左手で奏でられるメロディが春の訪れを感じさせてくれます。デンマークへ旅行した際にホームシックになったグリーグが、祖国ノルウェーの雄大な自然を讃えて、この曲を作曲したそうです。

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標準版ピアノ楽譜 グリーグ 抒情小曲集1 New Edition (音楽之友社)

抒情小曲集の第1~5巻を納めており、『春に寄せて』の他、『ちょうちょう』や『小人の行進』が含まれています。舘野泉さんの解説も必読です。


全音ピアノピース209 グリーグ 春に寄す (全音楽譜出版社)

こちらはピアノピースとなっております


『春のささやき』op.32-3~シンディング

シンディングは、グリーグの次世代に当たるノルウェーの作曲家で、4つの交響曲、ピアノやヴァイオリンのための協奏曲、オペラ等を残しました。

その中でも最も有名なのが、この『春のささやき』で、ハーモニーを彩る音階の動きが活発な作品です。

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ピアノピースギャラリー11 音の絵(ドレミ楽譜出版社)

ラフマニノフ『音の絵』、デュカス『魔法使いの弟子』他、19世紀末から20世紀にかけて活躍した近・現代の作曲家の作品を収録しています


『春への憧れ』 K596~モーツァルト

この歌曲は、モーツァルトが亡くなる1791年に作曲されました。5月に咲くすみれを待ちわびる歌詞が、童謡のような素朴なメロディで歌われます。

このメロディの元ネタは、ピアノ協奏曲27番の第3楽章の主題で、この歌曲をピアノソロ用にアレンジしたものが、初級者用の練習曲として出版されています。

元ネタの、ピアノ協奏曲第27番第3楽章の冒頭です

ピアノソロ用の楽譜も出ています

■楽譜はこちら


独唱 最新・世界名歌曲選集 ドイツ歌曲名歌集1(原調版)(音楽之友社)

モーツァルト、シューベルト、ブラームス、R.シュトラウス他、ドイツ歌曲の主要な作品をあつめています


大切にしたい世界の名歌・愛唱歌集(ケイ・エム・ピー)

女声二部合唱用にアレンジされた、日本語で歌う世界の歌曲集。『故郷の人々』や『カロ・ミオ・ベン』、『アヴェ・マリア』など、懐かしのメロディが大集合!


新版 4期のピアノ名曲集1 バイエル~ブルクミュラー程度(Gakken)

ピアノソロで弾く『春への憧れ』が収められている、ピアノ名曲集の第1巻。バッハ、モーツァルトからチャイコフスキーや中田喜直まで、さまざまな初心者向けの小品が集められています。


『春への想い』D.686~シューベルト

「歌曲の王」と呼ばれるシューベルト春への想いは、23歳の頃に書かれたもので、シューベルトらしい、民謡長の素朴な歌曲です。
詩を書いたウーラントは、政治家としても活躍したドイツ人で、メンデルスゾーンやレーヴェ、ブラームス他多くの作曲家が、彼の詩に曲をつけています。

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声楽ライブラリー ドイツ歌曲集 1 [改訂新版] 原調版(全音楽譜出版社)

歌詞の対訳や文法解説も充実したドイツ歌曲集。モーツァルト、シューベルト他の名曲が目白押し!


この作品は、後にリストがピアノソロ用に編曲しています。

■楽譜はこちら


全音ピアノライブラリー リスト シューベルトの歌による13のピアノ小品集(全音楽譜出版社)

『魔王』、『鱒』、『セレナーデ』他、シューベルトの歌曲をリストがピアノ独奏用にアレンジした作品が収録されています


愛のワルツ(『「春」5つの小品』Op. 57 より) ~モシュコフスキ

モシュコフスキは、1854年ポーランドに生まれ、ベルリンやパリで活躍したピアニスト、ピアノ教師です。作曲家としても、数々の練習曲集や、『スペイン舞曲』等で知られています。
この『愛のワルツ』、『春の鐘』、『花』他、春の息吹を感じるような『「春」5つの小品』と名付けられた作品集に収められています。この作品集の最後を飾る『愛のワルツ』は、流麗なワルツと情熱的な中間部が、春の薫りと共に訪れた愛を奏でているかのようです。

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標準版ピアノ楽譜 モシュコフスキ ピアノ曲集 New Edition(音楽之友社)

『愛のワルツ』、『カプリス・エチュード』、『スペイン奇想曲』他が収録されています。解説や主要作品目録も充実しています。


『ひばりの歌』(『子供のためのアルバム』op.39より)~チャイコフスキー

全24曲からなるこの『子供のためのアルバム』は、チャイコフスキーの甥(当時7歳)のために書かれた曲集です。ロシアの民話や、ヨーロッパの国々をイメージした曲など、楽しく叙情的な作品が並んでいます。

その22曲目『ひばりの歌』は、春を告げるひばりの鳴き声を模したような響きが軽快な、心浮き立つ小品です。

■楽譜はこちら


全音ピアノライブラリー チャイコフスキー こどものためのアルバム
(全音楽譜出版社)

曲のイメージが湧きやすい解説付きです。


因みに、同じチャイコフスキーのピアノ曲集『四季』の3月にも『ひばりの歌』がありますが、こちらは冬の名残を感じる早春といった感じで、しっとりと歌われます。

■楽譜はこちら


標準版ピアノ楽譜 チャイコフスキー 四季 New Edition 解説付(音楽之友社)

自筆譜を含む複数の資料を検証した校訂版です


『春のワルツ』~ バリオス 

春を告げる小品佳作集、最後はクラシック・ギターの作品をご紹介しましょう。

バリオスは、ストラヴィンスキーや山田耕作と同時代人の、南米パラグアイのギタリスト、作曲家です。

10代の頃より地元の民俗音楽に強い関心を示し、20歳で早くもギター奏者、作曲家として頭角を示し、南米を旅しながら、ギターのための作品を300曲以上残しています。

この『春のワルツ』は、ワルツを多く残したバリオスならではの、優しい春の日差しを待ち望むような小曲です。

その他にも、『郷愁のショーロ最後のトレモロ、バッハに影響を受けた大聖堂等、愛奏されている作品は多く、クラシックギター作曲家として欠かせない一人です。

『郷愁のショーロ』

「ショーロ」とは、ブラジルのポピュラー音楽で、ジャズのような即興が聴きどころです。

『最後のトレモロ』

バリオス最晩年に残された、哀愁を帯びた小品

『大聖堂』

福山雅治さんが主人公のギタリストを演じた映画『マチネの終わりに』で演奏されていました。「前奏曲」、「宗教的なアンダンテ」(2:45~)、「荘重なアレグロ」(4:30~)の3曲から成る、敬虔な祈りに満ちた作品です。

こちらは、バリオス自身の演奏による第2楽章の録音です。

■楽譜はこちら


バリオス傑作選 (鈴木大介 監修/現代ギター社)

バリオス作品を愛奏する人気ギタリスト、鈴木大介監修による、バリオスの代表作を集めた決定版的1冊!


第2楽章:日本の春、桜の歌

日本の春を象徴する花と言えば、まずは桜が浮かびます。

森山直太朗さんや川口恭吾さん、コブクロを始めとして、「さくら」とタイトルが付く歌は数多くありますが、日本人に最も馴染みのある『さくら』の歌と言えば、「さくらさくら」の歌詞で始まる歌曲でしょう。

この曲は幕末期の江戸で、子ども用の箏練習曲として作られたものと言われています。それが、明治中期に出版された五線譜による箏の入門曲集に採用され、その後、昭和10年代に音楽の教科書にも掲載されたことで、全国に広がりました。

儚い美しさを感じさせるメロディと、描かれる情景の美しさは多くの作曲家にインスピレーションを与え、様々な曲が作られました。

さくら変奏曲~宮城道雄

宮城道雄は明治27年に神戸に生まれた、箏演奏家、作曲家です。

7歳の頃失明しましたが、これを転機に音楽の道を志し、箏や尺八等の邦楽の普及と新作の創作、洋楽との共存など、多大な足跡を残しました。

お正月のBGMとして欠かすことのできない『春の海』も、彼の作品です。

■楽譜はこちら


管楽器&その他合奏譜 春の海 フルートとギターの2重奏/宮城道雄(LCS968) (フェアリー・オンデマンド)

オリジナルは筝と尺八ですが、こちらはフルートとギターのための楽譜です


全音ピアノピース288 春の海/宮城道雄(全音楽譜出版社)

こちらはピアノ独奏用の楽譜です


「さくら」箏独奏による主題と六つの変奏~藤井凡大

藤井凡大は、昭和6年に生まれ、邦楽器の分野を中心に大きな足跡を残した作曲家演奏家です。多くの箏曲合奏曲のみならず、合唱作品も残しており、指揮者としても活躍しました。

さくら(混声合唱のための『うたⅡ』)より~武満徹

日本を代表する作曲家の一人、武満徹が編曲した『さくら』も聞き逃せない1曲です。

器楽伴奏のないアカペラの混声合唱用にアレンジされていますが、彼らしい、静謐な静物画のような響きに魅せられます。

■楽譜はこちら


武満徹 混声合唱のための うたⅡ (ショット・ミュージック)

『翼』、『死んだ男の残したものは』他、武満の世界を垣間見ることが出来る合唱譜です。


幻想曲「さくらさくら」~平井康三郎

平井康三郎は、オーケストラ作品から邦楽器曲、数多くの中学校歌や小学校歌など、幅広い作品を残した作曲家・教育者です。

この『幻想曲「さくらさくら」』や、童謡『とんぼのめがね』は、聞いたり歌ったりしたことがある方も多いかと思います。

■楽譜はこちら


全音ピアノピース297 幻想曲「さくらさくら」平井康三郎全音楽譜出版社)

ソロ用のピアノピース譜です


『さくら』に魅了されたのは、日本人だけではありません。

民謡の主題による変奏曲op.87~カバレフスキー

運動会でおなじみの『道化師のギャロップ』で有名なカバレフスキーも、『民謡の主題による変奏曲』の中で、『さくら』のメロディを引用しています。

まずは、運動会でお馴染みの組曲『道化師』より「ギャロップ」

ロシアで作曲家、ピアニストとして活躍したカバレフスキーは、教育者としても業績を残しており、子供のために多くのピアノ作品を書いています。

この『民謡の主題による変奏曲』は、アメリカ、フランス、そして日本の『さくら』を主題にした小品のメドレーで、それぞれの国の音楽の描き分けが楽しい作品です。

0:06~アメリカ 3:40~フランス 8:55~日本

■楽譜はこちら


全音ピアノライブラリー カバレフスキー 組曲《道化師》より「ギャロップ」(4手連弾)(全音楽譜出版社)

『道化師のギャロップ』の4手連弾用楽譜。発表会で弾いたら盛り上がること間違いなしです


カバレフスキー/民謡の主題による変奏曲OP.87 ピアノ独奏版(シャーマー社)


歌劇『蝶々夫人』~プッチーニ

イタリア・オペラ界の大作曲家プッチーニの歌劇蝶々夫人にも『さくら』が登場します。

長崎を舞台に、没落した藩士の娘蝶々さんと、自由奔放なアメリカ海軍士官ピンカートンとの悲劇を描いたこの作品は、プッチーニ自身が日本の風習や宗教儀式などを取材し、民謡などの日本音楽の楽譜を集め、書かれました。

第1幕フィナーレの「愛の二重唱」や第2幕に歌われるアリア『ある晴れた日に』、第3幕のアリア『さらば、愛の巣』など、プッチーニらしい甘い旋律が魅力的なオペラで、世界中の歌劇場で繰り返し上演されている名曲です。

そんな『蝶々夫人』の第1幕には、アメリカ国歌や日本国歌、そして『さくら』が引用されています。

7:28~アメリカ国歌 21:54~君が代 26:02~さくらさくら
37:50~愛の二重唱 1:01:15~ある晴れた日に 2:02:34~さらば愛の巣よ

■楽譜はこちら


プッチーニ/蝶々夫人(リコルディ社)

『蝶々夫人』の音楽が全て詰まったフルスコアです


イタリア オペラ アリア名曲集 ソプラノ(3)<改訂版>(ドレミ楽譜出版社)

プッチーニの代表的アリアを中心に収録されています


プッチーニ/蝶々夫人(ドーヴァー社)

ピアノ伴奏によるヴォーカルスコアです。


オペラ対訳ライブラリー プッチーニ 蝶々夫人(音楽之友社)

歌詞やト書きを読むだけでも泣けてくる名台本です。


交響曲第5番『SAKURA』~リード

『さくら』七変化、最後は吹奏楽界の大作曲家、アルフレッド・リードの作品をご紹介します。

リードは『アルメニアン・ダンス』、『春の猟犬』、第7番まである『吹奏楽のための組曲』多々、200曲以上の作品を残しており、2005年に亡くなって20年以上経った現在も、多くの演奏会で取り上げられています。

そのリードの70歳の誕生日を記念して、1994年に東京の洗足学園音楽大学から委嘱されて書かれた交響曲第5番は、3つの楽章からなり、2楽章が『さくら』をテーマにした変奏曲となっています。金管楽器の荘重な響きと木管楽器の細やかな歌が、日本とも縁が深かったリードの「和心」を感じさせる名曲です。 

第1楽章0:43~ 第2楽章にサクラ9:28~ 第3楽章16:08~ 

春の訪れを描いたクラシック音楽をご紹介する「クラシックに詳しっく」4月号、次回後半はオーケストラ作品を中心にご案内しますので、お楽しみに☺

この記事を書いた人

もり
魚と麺類がおいしい福岡に生まれ、高校卒業後に渡欧。1年のドイツ語研修を経て、ウィーンにてピアノ、古楽奏法、音楽学、楽器法、指揮法などを学ぶ。帰国後、大学にて音楽学を専攻、同時に棒振り人生をスタート。指揮、トレーナー、講座、編曲等でクラシック系を中心に音楽と携わり、早〇十年。ニュースはスマホで読みますが、楽譜と書籍は紙印刷を今でもこよなく重宝しています。

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